Mobb 0.2.0 をリリースしました
このバージョンでの大きな変更点は、helpersメソッドの追加とconditionメソッドの追加です。それぞれ、Mobb DSLのベースとなっているSinatraでは非常に大きな役目を果たしていたけれど、まだ移植が終わっていなかった機能です。
https://github.com/kinoppyd/mobb/releases/tag/v0.2.0
新機能の解説
0.2.0では、 helpers と condition が大きな変更点です。
helpers
helpersメソッドは、onイベントの中でアクセス可能なメソッドをMobbアプリケーションのトップレベルに定義するためのメソッドです。
require 'mobb'
helpers do
def greet(name)
"Hello #{name}"
end
end
on "Hello" do
greet(@env.user.name)
end
このように、 on メソッドのブロックの中でアクセスできる greet メソッドのような、ヘルパーと呼ばれるメソッドを定義します。
本来、 on メソッドのブロックは、この記述の場合は main オブジェクトに対するクロージャになっています。しかし、MobbやSinatraは内部でこの binding を書き換えるトリックを使っており、通常の手順では main オブジェクトに定義したメソッドや値を参照できません。例えば、次のコードは実際にブロックの中が呼び出される時にエラーになります。
require 'mobb'
def yo
"Yo"
end
on 'Yo' do
yo # error on runtime!
end
そのため、 helpers というメソッドを使い、一時的に self を on メソッドのブロックが実行される時と同じスコープに書き換えます。そして、そのスコープ内で def を使ってメソッドを定義することで、 on のブロックからアクセスできるヘルパーメソッドを定義することができるのです。
Conditions
conditionsは、 on に対して次のようなオプションを付与するように振る舞います。
require 'mobb'
on 'Yo', ignore_bot: true do
'Yo'
end
on /Hi/, reply_to_me: true do
"Hi #{@env.user.name}"
end
この例では、 bot以外からの Yo という発言に Yo と返事をし、自分に対するリプライの中に Hi の文字が含まれていれば、 Hi と返事をします。特に Yo の方は、 ignore_bot のコンディションを有効にしないと、自身の発言に対しても Yo と反応してしまい、無限ループが発生します。
現在、デフォルトで用意されている condition は、 ignore_bot と reply_to_me で、いずれも bool の値をとります。ですが、次のようにして独自の condition を定義することも可能です。
require 'mobb'
set(:probability) { |value| condition { rand <= value } }
on /Yo/, reply_to_me: true, probability: 0.1 do
"Yo"
end
on /Yo/, reply_to_me: true do
"Ha?"
end
set メソッドで probability という Condition を定義しています。ブロックの中では、 value という引数を受け取り、 condition メソッドのブロック引数の中でそれを利用しています。この例では、 Yo という呼びかけに対して1/10の確率で Yo と返し、それ以外は Ha? と返します。Mobbでは、同じマッチングの on を複数定義すると、定義した順に評価して先に一致した on のブロックを実行します。 probability という condition は、9/10の確率で失敗するので、失敗した場合は下のブロックが実行されるというわけです(下のブロックは確率的な condition が設定されていないので、必ず成功します)。
Mobbの今後の予定
周囲に使ってくれている人が何人かいるので、フィードバックを受けながら順次改修していく予定です。一旦の直近の目標としては、現在 on ブロックの中で直接触っている @env の変数を、何かしらの形でラップしようと思っています(Sinatra における request メソッドのように)。
これからもMobbをよろしくおねがいします。