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BotはBotと会話するべきかどうか?

posted at 2018-12-13 02:22:54 +0900 by kinoppyd

このエントリは、  Mobb/Repp Advent Calendar の十三日目です

BotとBotの関係性

突然ですが、このBotは無限ループを引き起こします。

require 'mobb'

on 'Yo' do
  'Yo'
end

Yoという発言を受け取り、Yoと自分も発言すると、自分の発言を拾って更にYoが無限にYoするからです。Mobbでは、これを防ぐために ignore_bot というコンディションフィルタを用意しています。

require 'mobb'

on 'Yo', ignore_bot: true do
  'Yo'
end

ignore_botコンディションを利用することによって、このonのブロックはBotに反応しなくなります。したがって、自分自身のYoの発言に自分で反応することもなくなります。(もっとも、これはReppハンドラが正しく人間とBotのアカウントを判断して情報を送ってくれるときに限るので、例えばBotと人間の区別がつかないサービスの場合はもちろん機能しません)

チュートリアルを紹介したエントリでも言及しましたが、この ignore_bot というフィルタは、今後デフォルトで機能するように変わる予定です。すなわち、次のバージョンのMobbでは、最初のコードと次のコードが全く等価になるということです。そのかわりに、次のバージョンからは react_to_bot と include_myself コンディションが用意されます。このコンディションをtrueに設定すると、BotはBotのメッセージに反応するようになります。

なぜこのような変更が入るかというと、BotとBotの関係性と安全性の問題があるからです。

Botフレームワークに限らず多くのライブラリは、記述の簡単さと、自由さと、安全性を天秤にかけることになります。Mobbは、その中でも簡単さと自由さに重点を置いていて、安全性に関しては優先度を下げていました(ここでいう安全性とは、ライブラリのセキュリティではなく、問題を起こしそうな記述を未然に防いでくれるかどうかということです)。そのため、Botが発したメッセージに関しても、ユーザーは特に何も考えることなくアクセスが可能で、Botに反応したくない場合はそれを明示的にユーザーが拒否すればいい、デフォルトでBotが可能な限り多くの情報に触れられるようにしたほうが良いという考え方で始まりました。しかしその一方で、この方針は無限ループを容易に引き起こしたり、無意味な発言を繰り返したりという行儀の良くない行動に関しても、記述するユーザーに責任を求めることになりました。

Mobbの安全性への姿勢は、リリース後に様々な人に触れてもらう中で、必要以上に軽視されているということが指摘されました。そのため、Mobbは次のバージョンから、いたずらに無限ループを起こしたり、他のBotにちょっかいを出す行儀の悪い行為をデフォルトで禁止し、そうしたい場合はユーザーに明示的に指示を求めるように変更することになりました。

次のバージョンからは、Mobbは自分を含む全てのBotの発言をデフォルトで無視します。これは、Botの安全性を高めるためです。そして、Botの発言を意図的に取り込みたい場合は、次のような記述が必要になります。

require 'mobb'

on 'Yo', react_to_bot: true do
  'Yo'
end

on 'Yo', react_to_bot: true, include_myself: true do
  'YoYo'
end

react_to_botコンディションは、自身を含めない他のすべてのBotの発言に対して反応するようになるコンディションです。そして、 include_myself コンディションは、自分自身の発言に対しても反応するようにするコンディションです。

ほぼすべてのケースにおいて、Botの作成者は react_to_bot コンディションを利用することでやりたいことがすべて実現すると思います。 include_myself は、昨日のエントリで紹介した chain/trigger 構文によって、自分自身への反応をする必要が無いからです。しかし、どうしてもすべてのメッセージに目を通したいというユーザー(例えば、自身を含む全ての発言を記録して、自身は何もしないBotを作りたいなど)のために、自分以外へのBotの反応、自分を含めたすべてのBotへの反応、という二段階の安全策を用意します。

記述性、自由度、安全性でバランスの取れた設計に

次のバージョンで追加されるコンディションで、Mobbは記述性をわずかに失い、安全性を大きく手に入れます。これは、必要なトレードオフです。しかし、Mobbの基本的な方針として、記述性と自由度を重視していく姿勢は変わりません。

次のバージョンのMobbは、年内にリリース予定です。よろしくおねがいします。