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「アニメ背景美術に描かれた都市」展に行ってきた

posted at 2023-08-06 15:18:00 +0900 by kinoppyd

少し前に、どうしても気になる展示があり金沢に弾丸で飛んでいって帰ってきた。

アニメ背景美術に描かれた都市

「アニメ背景美術に描かれた都市」という展示で、金沢の谷口吉郎・吉生記念 金沢建築館という美術館で実施されている。

もともとは、IGNの記事で知った展示会で、並んでるアニメの名前がどれも好きなアニメばかりだし、あまりこういう背景美術というポイントにフォーカスした展示は多くないので、凄く気になっていた。アニメの背景美術にフォーカスした展示は今までにもいくつか開催されているのを知っているけど、アニメに描かれた都市という切り口は初めて見た気がする。

谷口吉郎・吉生記念金沢建築館看板

会場の谷口吉郎・吉生記念金沢建築館は、金沢駅から車で20分ほどの距離にある。周囲に駅はないので、行くとしたらタクシーかバスの選択肢になり、少し不便。けれど、街が良い感じに綺麗だから、散策しながら歩いても十分楽しいとは思う。夏には向かないけど。

谷口吉郎・吉生記念金沢建築館全景

肝心の展示は、写真撮影禁止なので写真はない。これは結構残念で、めちゃくちゃ写真とりてぇ……と思った。展示そのものはかなり小規模で、原画の展示スペースは20分もあればじっくりと全てを見終わってしまう。他には、映像展示もあり、AKIRA、Ghost in the Shell、パトレイバー、鉄コン筋クリートやメトロポリスの背景美術を実際に描いた方々が当時を思い出しながら背景美術とはに答えるインタビュー映像が、全編30分ほどで繰り返し流れている。

原画の展示はやはり迫力が凄く、これAKIRAのOPのシーンじゃん! とか攻殻のラストシーンじゃん! とかめちゃくちゃ見覚えがある縦長のイラストが何点も飾ってあってテンションが上がる。メトロポリスのコンセプトイメージの実物を目にすると、書き込みの細かさに驚かされるし、同時にどんな建築を参考にしているのかの資料本も並べてあって興味深い。パトレイバーと攻殻機動隊はロケハンの写真も並んで展示してあって、こういうものからインスピレーション受けてるんだとかを感じられて面白い。鉄コン筋クリートは、なんだろそんなに強い印象残ってないけど、書き込まれとるなぁと記憶している。

映像コンテンツの方はこれまた面白くて、みんなどれだけブレードランナーに影響受けてるんだよと思うくらい名前が出てきた。AKIRAのスタッフがブレードランナーを見まくったと言っていたから、それに続くアニメはもう言うに及ばず、日本のSFアニメにとんでもないインパクトを与えたことが改めてわかった。攻殻機動隊のロケハンで偶然発見された結露によるぼかしの表現方法や、メトロポリスで参考にされたナチスの建築家アルベルト・シュペーアなんかに関する言及も面白かった。時代がどんどん3D主流になっていく中で、アナログ2Dで描く背景と3Dで描く背景の描き手側が感じている変化や、昔のアニメ現場の伝説みたいなむちゃくちゃな話とかも飛び出してきて驚嘆する。AKIRAのあの冒頭のパンはそんな裏話があったのかとか、時代ってすげえなぁ……とか思ったりもする。

総じて、タイトルのラインナップにあるアニメが好きな人なら、是非見た方が良い展示だと思う。規模は凄く小さいし、金沢は東京から遠いけど、それでも行く価値はあると思うので是非行ってみて欲しい。

鉄コン筋クリートの宝町のパネル

この美術館そのものも結構素敵な美術館で、常設展示も非常に小規模ながら存在する。建物の名前の通り、谷口吉郎という金沢出身の建築家の業績を、その息子の谷口𠮷生が設計した美術館で展示している。その中でも特に、赤坂にある迎賓館の和風別館という建物に存在する和室を完全再現して常設展示している。学芸員さんに色々聞いたところ、展示している完全再現の和室は色々と細かい作り込みやギミックがあり、それらも含めて赤坂の完全再現らしい。たとえば、長机が高さを変えて収納できるとか、茶室の天井の竹を編んだような模様は特殊な作り方で職人泣かせだとか、そういう話が聞ける。赤坂の方の迎賓館は本館の方を見学したことがあるが、和室があるのは知らなかったので新鮮な驚きだった。

赤坂迎賓館和風別館の和室完全再現

谷口吉郎は六角形のモチーフが好きらしく、天井や壁やライトなど様々なところに六角形の意匠が見られて、こだわりがあるんだなと感じた。

赤坂迎賓館和風別館の茶室完全再現

他には、この和室が展示してある部屋の外を眺める窓が良い感じだった。

窓の外の景色

この美術館を設計した息子の谷口𠮷生は、モダニズム建築で有名な人で、葛西臨海水族園東京博物館の法隆寺宝物館、最近だとGINZA SIXとかをデザインしている人で、あのいかにモダンもなシュッとした金属張りでコンクリートとガラスな平面的外見の建物を作る人だ。谷口吉郎・吉生記念金沢建築館も、そんな感じのモダニズム建築で、自分はかなり好きな建物だったので、こういう建物が好きな人は見に行くことをおすすめする。

内観

金沢は結構遠い。移動距離だけ見ると東京大阪間とそんなに変わらない。まあまあ時間がかかる。ちょっと諸々の事情で金沢に滞在した時間が2時間くらいだったけど、もう一度こんどは嫁と子供も連れてきたいなぁと思った。街が良い感じに詫び錆びしていて、もっと探索したいという気持ちがわいてくる街だった。そういう意味でも、金沢に行ってこの展示を見ることはとても良い週末のプランだと思うので、是非行って欲しい。目録はネットでも買えるけど、AKIRAや攻殻のあの有名なパンするシーンをリアルに見れるのはここだけだ。

ところで、金沢の回転寿司はビビるほどうまいと聞いていたので、有名なお店に行ってきた。確かに旨いけどそんな感動するお値段バランスってほどでも無かった。寿司の写真は無い。

谷口吉郎・吉生記念金沢建築館を背にした金沢の街